恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
排気ガスのにおいが好きになりそう。
このにおい、忘れられない。
「好きって言いたいけど、今はまだ言えない。だから、頑張って一発合格してくれよ」
私のもっさりヘアをおもいきりぐちゃぐちゃにして、お前はこの方がいいって言ってくれた。
5分くらいだったと思う。
信じられない時間。
幸せすぎて、夢の中みたい。
塩崎先生が言ってくれたこと。
不器用だけどまっすぐなところに惹かれたと。
食事や栄養の話をした時に、私の目がキラキラしていたと。
そして、一緒にいて本当に癒されるとも・・・・・・ 言ってくれた。
「ひとつ聞いていい?昨日のおかず、何て料理?うまかったけど、初めて食った。いろんなもんごちゃまぜだったし」
「なずな特製“風邪なんか吹っ飛ぶあったか煮物”です」
真剣な顔をしていた塩崎先生は、突然笑い出す。
目がなくなっちゃうくらいに笑ってくれる。
「お前、変なヤツ。でも、そこがお前らしくて好き。あ!!!好きって言っちゃった」
わざとなのか、気付かずに口から出たのかわからないけど、それが塩崎先生の心からの言葉なんだって伝わる。
塩崎先生は真っ直ぐな人だもん。