恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
「お願いします」
頭を下げ、助手席を見る。
あわわわわわ。
何と表現すればいいのだろう。
レモンと森林と風呂上がりの炭酸を掛け合わせたような。
簡単に言えば、“さわやか”だ。
さわやか過ぎて、ムカつくくらい。
さわやかって言葉は、なかなか使わないし、そう簡単に感じないよ?
なのに、この人には、しつこいくらいさわやかさがある。
1月なのに小麦色の肌。
これは多分スノボ焼けだな。
髪の色は、ほのかに茶色いけど、染めているわけではなさそう。
これは、休日のスポーツクラブの水泳のせいだろう。
目はそんなに大きくない。
でも、二重。
鼻筋は通っているけど、高すぎるわけじゃなく日本人らしい鼻。
プクっとしたかわいい唇は、熟したさくらんぼのよう……