チャット嬢 華

面接は
メールで問い合わせた。

電話となると
着信履歴に残るのが怖かったし、
こっちの業界では珍しいことではないらしい。

面接の待ち合わせ場所は
駅前通りのファッションビルの前に決まった。

予備校の朝の授業を終え、
私は胸を踊らせながら
地下鉄に乗った。

待ち合わせ場所には
5分前には到着。

女子校に通っていただけに
最低限のマナーは人並みにあるつもりだった。

ビル前で携帯の画面を見つめながら
そわそわしていたら、
目の前に一台の真っ白な車がとまった。

車の窓から
スーツを着た男が
私を見るなり手を招いた。

「こっち、こっち!」

ああ、この人が店の人か。

私が想像していたのとは
ちょっと違っていたが、
やはり風俗の店の人といえば
「黒スーツにセットされた髪」のようだ。

車に乗った私は
店の人に挨拶をした。

「初めまして。山川華といいます。」

店の人はこなれた感じに

「華ちゃんね。
 私はオーナーの鮎沢です。
 これから店に行くから。」

と言って、車を出した。
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