1センチの距離
「杏ちゃんと棗ちゃんてすごく仲良しだけど,付き合い長いの?」
席に着き,それぞれ飲み物を注文すると,千夏が2人に話し出した。
「私達は小1から……クラスが違っても,遊んでたらいつも一緒って感じになってました」
「小1から!?長いねー」
「俺とチーネより長いな」
「そぅなんですか?」
「俺達は小5から……だっけ?」
「そぅ。イチとドッジボールのバトルになって……」
千夏,壱依,杏の3人で会話は盛り上がっていた。
棗と嵐士はというと……
「……」
「……大丈夫か?」
「ぇ……?」
嵐士が棗にコソッと話し掛けた。
「や,なんか駅でしんどそーにしとったやろ?」
「ぁ……」
「人に酔ったとかか?」
「はぃ……ぁの,」
「ん?」
「だから喫茶店にって……?」
「まぁな……けど,俺も人混みって苦手やしな」
苦笑しながら言う嵐士。
まさか自分の為にと提案してくれた嵐士に嬉しく思い,はにかむ棗。
そんな2人の空気を密かに見守る3人だった。