1センチの距離

それぞれの想い


あれから季節は流れ……


また,あの季節がやってきた。




――大学祭


毎年恒例の行事ではあるが,杏と棗にとっては初めてのこと。


去年のことを思い出しながら,準備を行っていた。


「杏ちゃんはあたしとゴールで待機,棗ちゃんは受付だけど……何かわからないこととかあったら嵐士に聞いたらいいからね」


指示を出す千夏に「はぃ!」と元気よく返事をする2人。


「……2人共,そんな緊張せんでええんやで」


笑いながら2人を安心させる様に言う嵐士。


それでも大学ということもあってか,少しばかり緊張が滲み出ている2人。


「初めてだし,仕方ねぇよ。そのうち緊張も解けるさ」


壱依は嵐士に耳打ちすると,呼び込みボードを手に持った。


「じゃあ,俺は呼び込み行ってくるんで」


「しっかり呼んで来てよー!」


千夏が叫ぶと,右手を挙げ「まかしとけ!」と言い,体育館を出て行く壱依。


「じゃぁ,あたし達も残った準備しようか」


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