1センチの距離
それぞれの待機場所で,セッティングの最終チェックや,自分の作業分担の確認をしていく。
「……どぅ?杏ちゃんのやること,わからないところあった?」
「んーと,今のところ大丈夫です」
「そっか。良かった……それ,去年あたしがやった事だから,杏ちゃんならすぐに覚えちゃうよ」
フフッと微笑む千夏に微笑みを返す杏。
少しずつ緊張も解れているようだ。
一方,棗はというと……
「……」
ガチガチに緊張していた。
「…棗ちゃん」
「はいっ」
「…去年の学祭で,俺が受付しとったの……覚えとる?」
椅子に座っている棗の前にしゃがみ,机に手を置く嵐士。
「はぃ……確か,あたし達がお客さんの中で最初の女の子って言ってましたよね?」
「せやで。最初やったし,最後でもあったゎ」
「そぉだったんですか?」
「うん。せやからな,2人がこの学校に入学してくれただけでも嬉しいのに,このサークルに入ってくれたやん?チーネも壱依も,もちろん俺もめっちゃ感謝しとんねん」