1センチの距離
「授業とかは楽しくないんやから,学祭は一緒に楽しもうな」
懐かしみながら話し終わると,フッと微笑み棗の頭をポンポンと軽くたたいた。
そんな嵐士の言葉や仕草に,いつの間にか緊張が解れた棗。
そして,“あたしなりにがんばろぅ”と,気合いを入れたのだった。
「こんにちわ。ご参加ですか?」
「キックターゲットに参加しませんかー?」
「おめでとうございます!こちら,景品になります」
体育館内で響く人の声。
フットサルの他にも出し物をしているサークルがあるのだが,活気のある声がするのはフットサルサークルだけだった。
「ありがとうございましたー!」
壱依が最後の参加者に声をかけ,サークルの出し物は終了した。
「2人共,お疲れ様」
受付に集まり,杏と棗に声をかける千夏。
「「お疲れ様です」」
笑顔で応える2人。
始めの緊張で強ばっていた顔が嘘のように,やりきった顔をしていた。