1センチの距離
「初めての学祭はどぅだった?」
ニコニコしながら問いかける千夏。
杏も棗も顔を見合せ,
「すごく楽しかったです!」
と答えた。
2人の返答に,千夏はもちろん,嵐士や壱依,他のメンバー達も満足気に微笑んだ。
「さて……あたし達もまわろっか」
「そぅやな,出店もまだやってるしな」
「調度お腹も空いてきたし」
時刻は14時を回っていた。
体育館で出し物をしていたサークルは,14時以降が空時間だった。
そのため,昼食の時間がいつもより2時間遅くなっていた。
「係の仕事してる時はお腹空いてるってわからないのにね」
「終わった途端,お腹鳴りそぉなくらいです」
千夏と棗が話す後ろでは,嵐士と杏が沈黙状態だった。
先ほどの係の人同士で喋りながら校内を廻っているのだが,嵐士も杏も会話に詰まっていた。