1センチの距離


“せめて1枚”



その想いが届いたかのように,棗の蹴り上げたボールは2番と3番ボードに当たった。


……そう,2枚抜きだ。



「……当たった?」


「棗すごい!2枚当たったよ!」


呆然としてゴールを見つめる棗に近づく杏。



「ぁ……当たったよ,杏!嬉しい!」


杏の声で我に帰った棗は杏の手を取り喜んだ。



「棗ちゃーん,まだ蹴れるよー?」


ゴールから笑いながら叫ぶ千夏の声に,ほんとだ!と言って蹴る位置に戻る棗。



最後は外してしまったが,杏は1枚,棗は2枚と,良い結果を出すことができた。



「2人共,すごいじゃん!」


千夏は2人に近づき話し掛けた。


「まぐれですけど,すごく嬉しいです!」


「1枚も当てれないんじゃないかって思ってたんで余計に嬉しいです!」


「そっかそっか。1枚も当てれない男子もいるくらいだし,2人はほんとにすごいよ!」


笑いながら話す3人。


そんな3人の輪に入る様に声が掛かった。


< 6 / 20 >

この作品をシェア

pagetop