幼なじみ卒業
自動販売機からウローン茶とポカリが出てきた。

それと同時にお釣りがチャリンチャリンと音を立てて出てきた。

私はお釣りをジャージのポケットの中にしまった。

そしてウーロン茶とポカリを手に取った。

私はため息を吐いた。

千秋はあの時何も言わなかったけれど、きっと心の底で私の事を笑っているはずだ。

・・・なんかプライドが傷つくな~。

そう思った時、ポカリを床に落とした。

私が拾おうとしたら千秋に先に拾われた。

「ん。」と言って私に渡す。

千秋は自動販売機に小銭を入れた。

「さっきから何いじけてるの?」

千秋はそう言って自動販売機のボタンを押した。

「い・・・いじけてなんかないよ。
 悔しいだけだもん。運動は結構得意で運動部が何人いたって、何とかなるって思っただ もん。千秋だって全勝したら何でも買ってくれるって言うから頑張ったのに。
 私のプライドがメチャメチャというか。」

私がそう言うと千秋は笑った。

「な・・・なんで笑うの!」

千秋はそんな私の隣に来て言った。

「いや、一生懸命だなって・・・。」

笑いながらそんな事を言われたから、何だか一生懸命やった自分が恥ずかしくなった。

「どーせ、馬鹿みたいとか思ってんでしょ!」

私はプイっと顔を背けた。

「違うよ。」

千秋はキッパリと言った。

私は「じゃ何?」と言って顔を千秋に向けた。

「・・・可愛いなって思っただけ。」

千秋は小さい声でそう言った。

タチの悪い冗談って思ったけど、千秋の耳が赤かったから冗談ではないと分かった。

でも私の場合、冗談でも本気でもどうすればいいか分からなかった。

だってどっちにしろ誰かに「可愛い。」なんて言われた事も思われた事も一度も無かったから。



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