I and You
「それで、雅子は一郎さんが、どんなことを考えていると思うの?」
知世が雅子の思っていることを率直に聞いてみた。

「ひょっとしたら・・・・・・本当に私と離婚しようと思っているのかも」
雅子が不安気に言う。

「そんなことないわよ」
知世が笑顔で雅子を励ます。

「浮気相手とは別れたんでしょう」
「きっぱり別れたみたいなの」

「それだったら心配ないわよ。きっと、これからは、いい夫と父親になろうとしているのよ。いいことじゃない」
知世は、雅子に前向きに考えることを勧めた。

「でも、本当は一郎さんのこと愛しているのね」
知世が雅子の心の中を読み取ったように言う。

「・・・・・・・」
雅子は恥じらうように下を向いた。

「普段は一郎さんの愚痴ばかり言っているのに、いざ離婚することを考えたら、雅子のほうが未練があるようね・・・・・・」

「そんなんじゃ・・・・・・」
雅子は顔を赤くして否定した。
だが、本心は知世の言ったとおりだった。

「ところで、最近どうなの?」
「どうって・・・・・・・!? 」

「とぼけないで」
知世がにやり笑った。

「そのことね・・・・・・」
雅子も知世が言っている意味を理解した。

「今晩あたり、一郎さんの腕の中に飛び込んだら」
「か、からかわないでよ! 」
雅子が小声で怒るように言った。



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