I and You
クローンの頭痛は、定期的に起こるようになった。
だが、その傷みも今日限りだと思い、仕事を終えて康夫の別荘に向かおうとした。病院の職員専用駐車場に来ると、ひとりの男が現れた。

「先生、先日のお話させていただきました件は、考えていただけましたでしょうか? 」
男は愛想良くクローンに近づいた。

「君は誰だ ?」
クローンには記憶のない男だった。

「またまた、おとぼけになられまして、正直なところ無理なお願いを頼んでいるのはわかっています。でも、その分のお礼は十分にさせていただきます」
男は丁寧に頼むように言った。

クローンは、男の言っている意味がわからなかった。

「今度、一席設けますので、よろしくお願いします」
男は深くクローンに礼をした。

男は去り際にクローンに名刺を差し出した。
名刺を見ると男は、大平誠という名前で医療機器販売の営業マンだった。

クローンは名刺を受け取り、プリウスに乗り込み康夫の別荘へと向かった。

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