I and You
「アメリカのある大富豪が、自分の飼っている愛犬そっくりなクローン犬を作って欲しいと依頼があったんだ。それで成功したら、多額な報酬を得ることができるんだ」
康夫が熱く説明する。

「ど・・・・・・どうしても今からアメリカに立たなきゃいけないのか?」
クローンは、傷みから解放されたい気持ちで頼むように聞いた。

「世界中には、クローン研究をしている学者がたくさんいる。ほとんどは膨大な研究費用が必要なため、研究するものは資金繰りに苦しんでいる。俺だって、そのひとりだ」

「・・・・・・」

「全財産を研究費に充てて、それでも足りない分は、あっちこっちと借金までして、ここまできたんだ。その報酬は、俺には必要なんだ!」
康夫は訴えるように言った。

「そうだったのか・・・・・・わかった」
クローンは、傷みに耐えきれず、その場にひざまついた。

「一郎に会ったら、そのことを伝えておいてくれないか」
康夫は、用件を言って電話をきった。

クローンは、傷みに耐えながら白衣の外ポケットから小さな瓶入りの薬を取り出した。フタを開けようとした瞬間、手がすべって瓶の中の液体薬がすべてこぼれ落ちた。
クローンは、そのまま倒れ込んで気を失う。






< 28 / 67 >

この作品をシェア

pagetop