I and You
その日の夜。

クローンは大平と一緒に料亭の一室にいた。

黒檀(こくたん)の和テーブルを挟んで、二人はさし向かえに座っている。

「先生、どうもありがとうございました。わが社の製品を推薦していただきまして」
大平が銚子を差し出す。

「俺の推薦があれば、君のところの製品が使われることは間違いない」
クローンは盃を手にして言った。

「ありがとうございます」
大平は、クローンを目の前にして正座をして深々く礼をした。

「それで、これは少しばかりですが、わが社を推薦していただきましたお礼でございます」
大平が紫色の袱紗(ふくさ)をテブールの上に置いて、クローンの前に差し出した。

クローンは、袱紗を手にして拡げるとA5サイズの茶封筒だった。
茶封筒の中には札束が入っている。

クローンは、封筒を自分の通勤用バッグにしまい込んだ。


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