I and You
「俺は、おまえのことを思ってやったんだ」
クローンは、きっぱり言い切った。

「それは、どういうことだ? 」
一郎はクローンを睨み返す。

「いつかは、おまえも病院の院長になる。その時になって、良子っていう女がいると、おまえが困ると思ったからだ」

「・・・・・・」

「院長になったとたんに、彼女が現れたりしたら、おまえの立場がなくなったりするんじゃないか? 」

「良子は、そんな女じゃない! 」
一郎は反論した。

「そうか・・・・・・それじゃ聞くが、おまえにとって院長の椅子と女とは、どっちが大切なんだ? 」
クローンは、一郎の心の奥を見透かすように聞いた。

「・・・・・・」
一郎は答えられなかった。


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