I and You
「だが、捜査官から興味深いことを聞いた・・・・・・」
康夫が言葉を切って、クローンの方を見た。

「捜査官から何を聞いたんだ? 」
一郎は、康夫の話の続きを聞きたかった。

「本来、ジャック・デップという人物は、温厚で真面目な優しい男だった。だが、クローンのジャック・デップは、巨悪で暴力的な男ということだった。本来のジャック・デップとは正反対の男だ。この話から想像すると、クローンのほうが、時間とともに新しい人格に変わったといえるだろう」

「・・・・・・・」

「俺は、その話を聞いて、自分が作ったクローン人間にも同じことが起きるじゃないかと不安になった。現に、おまえのクローンは、好き勝手に善悪関係ない行動をとろうとしていた」

「あ、そのとおりだ。このままだったら、こいつもアメリカの事件と同じことをやるかもしれない。それは十分に考えられるだろう」
一郎は、クローンの危険性を感じていた。

「もしも、クローン人間が犯罪を起こして社会的不安をあたえるようなことになったら、俺もおまえも刑務所行きだからな」
康夫は真顔で言った。

「それだったら、この結果は良かったんだな?」
一郎は、康夫にクローンの死を後悔してないことを確かめるように聞いた。






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