Ｉ and You

「ちょっと待ってくれ」
と、言って一郎は康夫に近づいた。

二人はリビングを出た。

「どうしたんだ？　」
康夫が怪訝（けげん）な顔で聞いた。

「明日から、俺とクローンが入れ代わるのか？　」
一郎が念を押すように聞いた。

「あぁ、そうだ。早く研究の成果を知りたいんだ。おまえもクローンが仕事や家庭のことを上手くやってくれたら、安心して女と会えるじゃないか？　」

「それは、そうだけど・・・・・・すぐに実生活に出すのは危険すぎるとは思わないのか？　」
一郎が心配そうに言った。

「何をためらっている？」
康夫は、一郎の本音を聞き出すように言った。

「日本では、クローン人間を作るのは学会では禁止されているのでは・・・・・・もしも、このことが学会に知れたら」
「なんだ！　そんなことか」
康夫は、あっけなく平然と言った。