妖怪愛物語
「あー、死ぬかと思った」
「大げさじゃのう」
飛んだことあるでしょあなた!!
初めて飛んだときからこんな余裕顔だったんですか!?そんな初めて空飛んで冷静でいられるか!!!
「もぅ・・・。で、妖怪はどこに・・・」
飛行に疲れきってしまっていたので思ったことを言うのはやめておいた。
「しっ!静かに・・・」
私が脱力していると急に言われる。
「近くに居るんじゃ」
そう言って狐さんは耳をすませた。近くに敵が居るって事だよね?
よく分からないまま言われたとおり静かにしていると、シャッと空気を切るような音がした。
「危ない!!!」
「え!?」
そしてよく分からないまま棒立ちしていると、何と、急に狐さんが私を姫抱きし、その場を飛んだ。
さっきまで私がいた所には葉っぱが刺さっていた。
ん?刺さっていた?・・・葉っぱがナイフみたいになってる。
ささったらひとたまりも無いと思われるような葉だった。皮膚もずったずただろう。想像しただけでも怖い。
「ふぅ。怪我はないか?桜」
冷静にさわやかに聞かれるものだから、私は間の抜けた声で返答してしまった。
「へ?あ、はい」
そういうやいなや、早速敵がお出ましのようだ。草むらから音がする。
「!?」
「近くまできちょるな」
近くの茂みが音をたてた。