紅蓮--Requiem--

4

　教室のドアを開けると、血の臭いが鼻を刺す。当たってはいけない予感は、的中してしまった。

教室の中は無残な死体だらけで、仲のよかった友達も皆、醜い亡骸となっている。

「いやぁぁぁぁ！」

私は、あまりにも悲惨な光景に絶叫した。その死体の群れは、私たちにはあまりにも残酷過ぎたのだ。

「う、ウチらも殺される…殺される…殺される…」

彩華は頭を抱えて怯えていた。彼女は、「殺される」と何回も連呼している。極めて強い錯乱状態に陥ったようだ。

彩華だけではない。私も含め、その場にいた人間は皆そうだった。この惨劇の跡を目の当たりにした私たちには、仕方のないことだったのだ。

「私、まだ死にたくない。まだやりたいことがたくさんあった。恋だってしたかった。もっと、みんなと一緒に遊びたかった…。」

玲はそう嘆くと、絶望のあまり床に倒れ込む。私は玲の言葉に同調した。私もこんな所で亡骸になりたくはなかった。

「大丈夫。きっと生きて帰れるよ。」

私は玲を慰めようと、彼女の肩にそっと手をかける。その時だった。

「奈落の底へようこそ…。」

教室のスピーカーから不審な声が聞こえてきた。教室内には不気味な電子音が響きわたっている。その声はさらに話を続けた。

「私は、この奈落を創りし者、ハデス。お前たちに復讐するためにきた。この場にはもう、逃げ道などない。私に逆らえば、天より罰が下るだろう。それでは、最初の命令だ。東塔の地下にこい。そこには、東塔の入り口にあるマンホールから入る事ができる。制限時間は１０分間。間に合わなければ、罰を受けてもらう。では、健闘を祈る。」

不審な声は、ガチャンという音とともに止んだ。

「ハデス？何や健闘を祈るって…。」

彩華はそう呟く。
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