紅蓮--Requiem--
 保健室の先生が外に出てしばらくすると、観紗は唐突に私たちに話しかけてきた。

「そう言えば、ある先輩に聞いたのですけど、ここはずっと昔、死刑囚専用の刑務所があった場所らしいのですよ。」

「またまた、怖がらせようと冗談を…。」

玲は、当然信じていない。玲の目を見た観紗は、何かを悟ったように口を開く。

「本当のことなのです…。」

先ほどとは違う、真剣な顔つきで話す観紗に、私たちは気圧されてしまった。

「ホントなの…?」

「本当です。そして、今日が丁度…、その刑務所が囚人ごと全焼した日と同じ、十月二十九日火曜日…。」

私たちは、その話に驚愕した。
「そんな話、聞いたこともないよ。」

「聞いたことがないのは、仕方がありません。長い間、極秘にされていた話なのですから。」

驚いて言葉も出ない私たちに、観紗は続けて言う。

「『この日がまた訪れるとき、人々は死に絶えるであろう。』それが、囚人が最期に残した言葉でした。それ以来、その日はその地の誰かが、奇妙な死を遂げていると言われています。」

もう私たちには、恐怖しか残っていなかった。

「と言うことは、今日、誰かが死ぬってこと?」

玲は怯えながらもそう言った。

「あくまでもウワサなので、断定はできません。しかし、もしこのウワサが本当なのだとしたら…。」

「…なのだと…したら…?」

張り詰める空気は重みを増し、長い沈黙が続く。

「やっ、イヤですねー。冗談に決まってるじゃないですか。そ、そんな話、あるわけないじゃないですか。」

観紗は動揺した様子で、そう告げた。皆からは安堵の溜め息が漏れる。
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