もし会いにきてくれたら、もう離さない
開けた窓から、夏の空気が一気に部屋に流れ込む。
「あっちぃな…こっちは。」
ウチワであおぎながら、瓶に口を付ける恭ちゃんがすごく大人に見えて、遠くに感じた。
「恭ちゃんが住んでる所はもっと涼しいの?」
「…ここよりは。それに向こうだと…余計なこと考えなくてすむ。」
寂しげに言う恭ちゃんは何かを考えるように外へ視線を投げた。
窓の外で空を舞うホタルが遠くに見える。
綺麗な黄色の光
恭ちゃんのいる都会ではきっと、あまり見ることのできない小さな光。
「きれいだなホタル。俺にくれたよな。紗智がまだ小さかった頃。覚えてるか?」
さっきまで不機嫌だったのに、優しい目をしてホタルを見る恭ちゃん。
恭ちゃんが何を考えているのか分からなくて、もっと近くに行きたくて、手を伸ばした。
恭ちゃんの広い背中の体温が伝わって、体が熱を増した。
「…っ」
離されたくなくて、ギュッとしがみついた。
「ホタルばっかり見てるんだもん。」
恭ちゃんに伝わってるかな。
私の体の熱。
夏のせいじゃない。
好きの気持ち。