もし会いにきてくれたら、もう離さない



「お前、大人をからかうのもいい加減に…」



振りほどこうとして向かい合った恭ちゃんに正面から抱きついた。




「私だってもう大人だよ。」



ギュッとした私の腕の中で、恭ちゃんの体に力が入ったのがわかる。





風鈴の音が静かに響くだけの沈黙のあと、恭ちゃんが振りほどこうとしていた手を緩めた。





「…大人ならさ、俺が喜ぶことしてみてよ?」





近づいた恭ちゃんからお酒に交じったコロンの香りがした。




顔にかかる恭ちゃんの吐息で心臓が掴まれたみたいにギュッとなる。





「恭ちゃん?」



「…冗談。お前には刺激が強かったか?」




笑いながら背を向けた恭ちゃんはこっちを振り向かずに、「帰れ」と言う。



それが悔しくて、恭ちゃんの肩を掴んで、引き寄せた。



「…っ、紗智…」




恭ちゃんの唇に自分の唇を重ねた。



恭ちゃんの唇に何度も触れた。


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