もし会いにきてくれたら、もう離さない
「何だそれ!そんなのもらったって、恭兄が喜ぶわけねぇだろ〜。」
泣きそうになるのを必死でこらえて、修を睨みつける。
「恭ちゃんはホタルが好きなんだよ。」
「お前はいつまでたってもガキだねぇ。」
「何よ。修だって、同じ歳じゃない。」
「…恭兄が好きなの教えてやろうか?」
笑いをこらえながら、胸を手で押さえた修が言った。
「恭兄が好きなのは、ボンキュボンで美人の姉ちゃんだってさ。最近学校でもモテモテだって言ってたしな〜。」
「ボンキュボン…」
「そ、どう頑張ってもお前じゃ無理。」
意味がわからず、自分の胸に手を当ててみる。
「それに恭兄はガキなんか相手にしないさ。そうだな…、あ、ああいうのが好きなんだよ。」
修が指さした先に、はしゃぐ女の人の姿。
紫陽花柄の浴衣に身を包み、男の人と手をつないで歩いている、綺麗な女の人。
「私もなるもん…。あんな風に綺麗になるもん!」
修の足を蹴飛ばして走り出す。
もうじき、恭ちゃんが年に一度帰ってくる日。
修が言ったことなんて気にしない。
だって、大好きな恭ちゃんは、いつだって、私に一番に会いに来てくれるんだ。
私の世界はいつだって、恭ちゃんが王様なんだ。