もし会いにきてくれたら、もう離さない

――――


蝉の鳴き声が飛び交う8月


ずっと晴れ続きの夏休み。


二時間に一本しかバスの通らない農道を、ただひたすら歩く。




「ねぇ聞いて、紗智、この間ダーとあのホテル行ったんだけど〜。」



「もう何回も聞いたよ、隣の部屋から声が聞こえてくるんでしょ。」



「そう、そうなんだけど、そしたら、隣のクラスの…」




超がつくほど田舎のこの町で、華の高校生である私たちが遊ぶような場所は限られている。


最新の機器の揃ったゲーセンも、最新食の早いカラオケも、この町には数少ない。


やることないってのはわかるけど、誰かと誰かが付き合って、エッチして…。


やることないからヤル…。


田舎町であればあるほど奥手だなんて、都会人の考えだ。


展開はこっちのほうがおそらく、光ほどに早い。



昨日まで友達だった男の子と今日付き合って、明日抱きしめ合う。



「紗智にはまだわかんないかな〜」


「そうかもね〜。」


「お、なんだか今日は楽しそうじゃん。」


「ふふ、楽しいよ。今日は特に。」



やっと会えるんだもん。


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