科学部恋愛
「亜樹はどう思って生物を選んだのかは知らねーけど、こうでもしないと仕方ねーだろ」
「…うん」
初めて郁斗を優しい人に見えた。
無神経ではなく親切に、
人の気持ちがちゃんと分かる人に。
「ありがと郁斗」
「ん。なんかださくない?俺」
照れ隠しなのかは分からないが
郁斗はそう言って
黒色の髪をくしゃっとしてた。
黙ってあたしは首を横に振る。
自然に笑みが零れてきて
『ぷっ』と吹き出してしまうと
郁斗に頭を叩かれた。
「そろそろ戻ろーぜ?暇っつーか生物いねぇし」
「うん、そーだね」
あたし達は立ち上がって、
教室まで帰った。