大切な人へ

喜一から私へ

喜一からの手紙は1枚だけ入っていた。

内容はこうだった。




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 奈菜子へ

 今日、俺は『余命』を知らされた。
 もう奈菜子の所に帰れる事は無いと思う。
 だから手紙にする。
 
 大倉から聞いたかもしれないけど、俺の心臓は弱い。
 だから20歳までは生きられない事は知ってた。
 でも、もうちょっとだけ奈菜子と一緒に居たかった。
 奈菜子が俺の事好きだって聞いたときめっちゃ嬉しかった。
 このまま死んでもいいって思った。
 でもな、奈菜子と一緒に居る時間が長くなるにつれて不安になった。
 「このまま死んだら奈菜子は誰かのものになる」とか、
 「死んでも奈菜子は俺の事想ってくれるんだろうか」とか、
 けっこう考えた。
 だから別れた。
 別れ告げるときは俺のほうが奈菜子より何十倍も悲しかった。
 
 それから1ヶ月して奈菜子に嫌われたり学校行けなくなったりして
 俺、すっげー悲しかった。
 でも、俺は奈菜子が幸せで奈菜子がずっと笑ってたらそれでいいと思ってる。
 
 奈菜子、今更遅いかもしれないけど
 俺は奈菜子のこと心から愛してるよ。

 喜一より

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