大切な人へ
そしたら先生は

「先生は思い出してるのかと思った。喜一くんのこと…。」

と言って悲しく笑った。
『喜一』っていう言葉を誰かの口から聞いたのは久しぶりだった。
皆、私に気を使ってくれてるんだと思う。
でも、私は喜一のこと忘れないようにもっともっと名前を呼んで欲しい。
だから先生が喜一の名前を呼んでくれて、すごく嬉しかった。
最後に私は

「先生。」
「何??」
「もっと喜一の名前呼んであげて下さい。」

と先生に言った。
先生は

「…約束する。」

と涙声で言った。
そんな先生に笑顔で手を振って私は小学校を出た。





喜一、花田先生に名前呼んでもらってよかったね。





喜一にそう言いながら。
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