赤の世界
 
何にもない俺の心に
じわじわ、入り込んでくる。


満たしてくれる。

その感触が、丁度よかった。





「じゃあ今度はそうするよ」

「嘘ばっかり」


俺の言葉が不満のようで
アユミが唇を尖らせる。



「悠が口だけなの知ってるもん」


そう言って笑った。


アユミは可愛いけど少し派手で
頭も良い方ではなかったけれど
物分りの良いコだった。


ベタベタと甘えるけれど
冷めた頭の持ち主でもあって

僕が楽に出来るよう
束縛などは決してしない。



「嘘はいいから今日は泊まって?」


アユの拙い声がまた甘える。
俺はこの声を気に入っていた。


いまは制服だし
明日の学校にも支障がない。


 
< 10 / 186 >

この作品をシェア

pagetop