赤の世界
何にもない俺の心に
じわじわ、入り込んでくる。
満たしてくれる。
その感触が、丁度よかった。
「じゃあ今度はそうするよ」
「嘘ばっかり」
俺の言葉が不満のようで
アユミが唇を尖らせる。
「悠が口だけなの知ってるもん」
そう言って笑った。
アユミは可愛いけど少し派手で
頭も良い方ではなかったけれど
物分りの良いコだった。
ベタベタと甘えるけれど
冷めた頭の持ち主でもあって
僕が楽に出来るよう
束縛などは決してしない。
「嘘はいいから今日は泊まって?」
アユの拙い声がまた甘える。
俺はこの声を気に入っていた。
いまは制服だし
明日の学校にも支障がない。