赤の世界
7. 華奢な指輪
次に雪が降るときは
傍にいてくれると言ったよね。
夢の中で聞いた
彼女の声を思い出す。
会いたくて――
会いたくて仕方ないのに。
俺には夢が見えない。
空を見つめられない。
どうしたらいいんだろう。
誰か教えてくれ。
そう唱えたときだった。
リビングから音がする。
機械的な電話の音。
彼女の事を教えてくれ。
もう夢ですら会えないから。
狂った思いで受話器を取ると
聞きなれた声がした。
「もしもし。柏木です」
「景…」
久しぶりに聞く声は少し低くて
決して明るくはない。
「悠?お前携帯は?」
「……切った」
それだけ告げる。
俺も明るくなど話せない。
俺の声に異変を感じたのか
景の声がより真剣になった。
「いまお前の家の前なんだ」
俺が無言でいると
景が構わず言葉を続ける。
「会えないかな?」
電話越しの声は少し
焦っているようにも思えた。