赤の世界
もしかして本当に
彼女の事を教えてくれるの?
受話器を落として
吸い寄せられるように
玄関の扉を開けた。
久しぶりに見る景の顔が
ふらふらしてよく見えない。
体勢を崩すと
景が駆け寄って俺を支えた。
「おい…っ!悠…!」
「…ごめん。ありがとう」
「…ちゃんと食ってないだろ」
「平気だよ。2~3日くらい…」
俺がそう言うと
景が丸っこい目を見開く。
「何が2~3日だよっ!」
なんでそんなに声を荒げるのか
分からなくて困惑する。
「もう2月だぞ…!」
景の声が響く。
だけど俺には信じられない。
だって景の言う事が本当なら
もう1ヶ月近く寝込んでる。
そんなはずないよ。
せいぜい2日か3日だよ。
だって1ヶ月弱も
俺が夢を見ないはずない。
2~3日調子が悪くてさ
もうすぐまた夢を見る。
だから1ヶ月なんて嘘だ。
嘘。嘘。嘘…。