赤の世界
 
もしかして本当に
彼女の事を教えてくれるの?



受話器を落として
吸い寄せられるように
玄関の扉を開けた。

久しぶりに見る景の顔が
ふらふらしてよく見えない。

体勢を崩すと
景が駆け寄って俺を支えた。





「おい…っ!悠…!」

「…ごめん。ありがとう」

「…ちゃんと食ってないだろ」

「平気だよ。2~3日くらい…」





俺がそう言うと
景が丸っこい目を見開く。

「何が2~3日だよっ!」

なんでそんなに声を荒げるのか
分からなくて困惑する。





「もう2月だぞ…!」



景の声が響く。
だけど俺には信じられない。

だって景の言う事が本当なら
もう1ヶ月近く寝込んでる。

そんなはずないよ。
せいぜい2日か3日だよ。

だって1ヶ月弱も
俺が夢を見ないはずない。

2~3日調子が悪くてさ
もうすぐまた夢を見る。

だから1ヶ月なんて嘘だ。

嘘。嘘。嘘…。


 
< 101 / 186 >

この作品をシェア

pagetop