赤の世界
 
「どこまで思い出した?」

景が哀しそうにそう言う。

俺が彼女を忘れたから
景はそんな目をしてたんだね。





「何にも覚えてない…」

「ただマンションの屋上から…」

「一緒に太陽を見た事だけ」





「夢に出てくるんだろう?」

景が哀しそうな目を近づけて
ゆっくりとそう言った。

「何で知ってるの…?」

「楓さんが言ってた」

「そう…」

会話が途切れた。
言葉が出てこない。

楓の顔が浮かんで
酷い罪悪感にかられる。



似てたから求めたなんて。

あんなに幸せだったのに。


 
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