赤の世界
 
その日の夜は
怖いぐらいに落ち着いて
深く眠ることが出来た。

夢を見れなくなって
目が覚めるたび辛かった。

それももう終わり。

明日は彼女に会える。
現実の世界で。





6時少し前に目が覚めた。

心は飢えていない。

ただ早く逢いたいと
逸る気持ちが溢れていた。

顔を洗って鏡を見る。
どんな顔をしよう。

忘れてしまったことを
怒られるだろうか。

俺と顔を合わせた彼女は
笑ってくれるだろうか。

夢の中のように。





急に不安が犇めく。

少しだけ怖くなる。

(大丈夫。)

そう自分に言い聞かせて
足早に家を出た。


 
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