赤の世界
 
思い出した。

思い出してしまった。

全てを―――





目から涙が溢れた。





見つめる先の女のコが
不安そうな目で俺を見ている。

あれは彼女じゃない。

あれは多分楓だ。

俺に全てを思い出させるために
景が立たせたんだろう。

赤い傘を持たせて。





思い出したんだ。

赤い傘を持つ本当の彼女は
もうこの世界にいないって。

いなくなってしまったって。





そう、いなくなった。

俺の目の前で。


 
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