赤の世界
「思い出せたんだね」
景が俺の肩をたたく。
哀しそうな目で見ながら。
「これ…雪の遺留品…」
そう言って景が渡してきたのは
いつか夢の中で見た華奢な指輪。
この指輪――
俺が雪にあげたんだ。
華奢で繊細なところが
雪みたいだと思って…。
眺めていると指輪には
ひとつも傷がない事に気付く。
「左手だけは無傷だったんだ」
察したように景が言う。
「きっとその指輪を…」
俺は無言で指輪を握り
景の言葉に聞き入った。
「壊したくなかったんだよ」
また涙が出てくる。