赤の世界
 
「悠…!」

泣いてばかりの俺に
雪に扮していた楓が駆け寄る。

本当にそっくりだね。
事故の日みたいだ。





「景くんから話を聞いたの…」

「私は代わりでもいい…」

「悠の傍にいたい…」

泣き出しそうな楓の顔は
やっぱり愛しい。

だけどだめだよ。
人の代わりに愛されるなんて。





楓はとっても綺麗なんだ。
雪みたいに綺麗なんだ。

だからちゃんと
幸せになってくれ。





それに俺は―――

もう行かなくちゃいけない。


 
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