赤の世界
初めて雪に会ったのは――
いつだか思い出せない。
すごく幼い頃だ。
いつも側には雪がいて
毎日優しい笑顔で過ごす。
小学生の頃の俺は
今よりだいぶ明るくて
目立ちたがり屋だったっけ。
派手な赤い色が好きで
赤い傘を買ってもらった。
そんな俺を見て
少し控えめな性格の雪が
羨むように眺めたんだ。
「悠くんは赤が似合うね」
「カッコいいだろー!」
「うん。羨ましいな」
「…雪も買ってもらいなよ!」
「私には似合わないよ」
そう言って雪は
控えめな色の傘をさしていた。