赤の世界
 
「世界は太陽が照らす」

「俺の事は雪が照らした」





太陽がなければ
世界は赤く染まらない。

無意味な産物だ。

俺も同じなんだ。

雪がいなければ
俺の心は飢えたまま。

普通に生きられもしない
無意味な産物。





「雪のところに行くんだ」

「そしたらまた雪に会える」

「また雪が照らしてくれる」





下を見るとマンションの前を
楓が駆けているのが見えた。

楓も追いかけてくれたんだね。
最低な俺の事を。

(ありがとう。)

心でそう唱える。

楓がエレベーターに乗るために
マンションの中に入っていく。

よかった。

君の前に降らずに済んで。

出来る事なら
潰れた俺も見ないで済むといい。

綺麗な目を汚さずに
もっと美しいものを見るといい。


 
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