赤の世界
 
―――ピッ。

―――ピッ。

―――ピッ。

―――ピッ。





酷く寒い空気が流れている。

身を暖めようと
凍えた両手を合わせる。

だけど何かがおかしい。

体温がない。





何も見えず
体も温められず

とても寂しい世界で
俺はゆっくりと絶望した。





きっとここに雪はいない。

雪はとても眩しくて
雪はとても温かいんだ。

こんな何も見えない
冷たい世界にはいない。





(どうして…?)

(連れてってと言ったのに。)



また願いは
叶えて貰えなかったようだ。


 
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