赤の世界
―大丈夫だよ―
聴きたかった声がした。
上を見ると空から
白くて細い手が伸びている。
息が出来ないくて
倒れそうになりながら
その白い手を求めて
必死に手を伸ばす。
夢の中では届かなかったのに
今度はちゃんと雪に触れた。
雪の手が俺を
優しく引き上げてくれる。
「……っ、はあ…っ」
深い深い深海から
やっと水面に出たときみたいに
やっと息が出来て
思いっきり息を吸った。
「悠…っ!」
直後に声を掛けられる。
朦朧とした意識の中で
なんとか顔を向けると
そこには景がいた。