赤の世界
 
どうして景がいるの――。





しだいに意識がはっきりして
ゆっくり辺りを見回すと

白い部屋と消毒の匂いがして
両親と景と楓がいる。


「俺…生きてるの…?」





皆が泣きながら俺を見てる。

「奇跡的に傷は浅かったんだ」

景が涙ぐむ目を拭ってる。

「だけど悠…全然起きなくて…」

「2週間以上も…意識不明で…」

楓がたどたどしく教えてくれた。
涙がぽろぽろこぼれている。





あれは死後の世界じゃなかった。
あれは俺の意識の中――。

本当に雪は俺の中にいるんだ。

俺の中にいてくれるんだ。





「悠…これ…」

景が渡してくれたのは
やっぱりあの指輪だった。

「ありがとう…」

俺はその指輪を強く握り締めた。


 
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