赤の世界
 
事故のときもこんな風に
気がつくとみんなが泣いてた。

真っ白な天井には
真っ白な蛍光灯があって。

この簡素な部屋の光景は
よく覚えている。


―――ピッ。

―――ピッ。


ベットの横を見ると
機械が俺の心音を鳴らしてる。

これだったんだ…。
ずっと聞こえていたのは。





機械音の響く部屋に

両親がいる――

景がいる――

楓がいる――


雪がこの部屋へ導いてくれた。

本当に守ってくれたんだ。

あの暗闇から連れ出して。

傷が浅いのも雪のおかげ?





やっぱり雪が太陽だ。

だって雪には――

「抗えない…」


俺は小さくつぶやいた。


 
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