赤の世界
 
この欠落感さえなくなれば
この寂しささえ埋まれば

何度もそう思った。



(そうすればきっと。)

普通に生きられる。
なのに俺はずっと飢えたままで。


誰かに相談したかったけど

哀れむような目がこわくて
景には言えなかった。

そしてもう
相談する相手などいないと

ゆっくり理解した。





俺はもう立ち直れない気がする。

最近じゃ女のコと居てまでも
心の飢えを感じるから。

手に負えきれない
砂漠のような心が胸にあって

理由もなく苦しい。


そして明日も明後日も
延々と苦しいのだと

教えているかのように
苦しみは止まない。




(夜にさえなれば。)


心でつぶやくのはこの一言。

夜にさえなれば
眠りが俺を救ってくれる。


唯一俺の心を救うのは
夜に見る夢だった。


 
< 14 / 186 >

この作品をシェア

pagetop