赤の世界
 
全身の傷はどれも
本当に浅いものばかりだった。

「景の言うとおりだね」




事故の時は沢山の包帯が
俺の体を包んでいたけど

今の体には包帯は少しだけ。

骨など折れてないし
大きな傷口も無い。

その訳を俺は知ってた。

もちろんそれは――


「雪…」






俺を救うのは雪。

俺の救えなかった雪。





そのか細い手が
いつも俺を救ってくれる。

 
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