赤の世界
「俺が屋上から飛び降りた時も」
「あの交通事故のときも…」
「何気ない日常の日も…」
「…いつだって彼女が」
「俺を助けてくれました…」
「彼女は俺の太陽だった…」
「彼女を壊してしまって…」
「彼女を死なせてしまって…」
「すみませんでした…」
「彼女に会わせてくれて…」
「彼女を生んでくれて…」
「…ありがとうございました」
言葉のはじめから
言葉の終わりまで
延々と涙が縺れて
言い切ったときには泣き崩れた。
雪の両親の背中は小さく震えて
無言のまま部屋を去って――
部屋の隅で見守っていた景が
嗚咽を続ける俺の背中を
やさしく撫でる。
俺の息が整ったのは
だいぶ後の事だった。