赤の世界
夢を見初めた頃は
同じ夢ばかり見るのが不気味で
なんとなく不安になった。
けれどいつからか
毎晩律儀に現れて
心を落ち着かせてくれる夢を
俺は気に入ってしまった。
昼間は現実の世界を生きて
夜は赤い世界を生きている。
そんな気がして
俺は夢を大事に想った。
大切なものだ
そんな意識を持ってから
夢を見て目を覚ますと
心が落ち着くばかりか
幸福な気持ちになった。
幸福は欠落感を埋めてくれた。
だから夜にさえなってしまえば
眠ってさえしまえば
こころの苦しさに蝕まれない。
目が覚めたときには
幸福が俺を満たしていて…
夕方になると
また寂しくなってはしまうけど
それまでの苦しみはない。
心が苦しみだす夕方には
景と遊んで心を埋める。
夜になると苦しみが増すから
女のコと繋がって心を埋める。
夢の事は誰にも言っていない。
理由は欠落感を相談しないのと一緒だ。