赤の世界
 
『x/x (x)』

今日の天気は晴れ。

悠くんと花火を見に
海まで浴衣で出かけた。



白い浴衣にしようと
当然のように思っていたけど

小学生のときの事を
ふと思い出して
赤い浴衣を買った。

まだ悠くんのような人には
遠く及ばないのに

私もあの綺麗な色彩を
纏ってみたいと思ったんだ。



すこし照れくさい気持ちで
悠くんの鳴らす
いつものチャイムに出たら

「綺麗だね」って
涙の出そうな言葉。



手を繋いで歩いた
海までの道は
私の大切な宝物になって

手を繋いで見た
あの綺麗な花火も
私の大切な宝物になる



なんでもないもの
儚いもの全て――

手を繋いだ悠くんが
宝物に変えてくれるんだ。



いつだってそう。

眩しくて見えない
美しい魔法を使って
私に沢山の宝物をくれる。

こんな卑しい私に
沢山の愛を教えてくれるんだ。

悠くんに出会えてよかった。

本当によかった。


 
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