赤の世界
 
「でも雪が降るくらい曇ってて」

「太陽は見れるのかな?」

エレベーターの中で
そう疑問を浮かべたのは楓。




「大丈夫だよ」

「こっちには運命も」

「絆もあるんだから」

そう言い返して笑うのは景。





「みぞれ雪は雨交じりの雪」

「…つまり溶けかけの雪」

「雪を溶かす熱は…」

「太陽が寄り添う証拠…」




俺は何かの呪文のように
そう唱えた。

彼女が隣にいたなら
きっと彼女もそう言ったと思う。

ぼうっとしている間に
エレベーターは10階へついた。


 
< 173 / 186 >

この作品をシェア

pagetop