赤の世界
「でも雪が降るくらい曇ってて」
「太陽は見れるのかな?」
エレベーターの中で
そう疑問を浮かべたのは楓。
「大丈夫だよ」
「こっちには運命も」
「絆もあるんだから」
そう言い返して笑うのは景。
「みぞれ雪は雨交じりの雪」
「…つまり溶けかけの雪」
「雪を溶かす熱は…」
「太陽が寄り添う証拠…」
俺は何かの呪文のように
そう唱えた。
彼女が隣にいたなら
きっと彼女もそう言ったと思う。
ぼうっとしている間に
エレベーターは10階へついた。