赤の世界
 
あの退院の日からは
3年が経っていた。

この景色を照らしたくて
この景色のために生きたくて

この景色を
ずっと眺めていたくて

吸い寄せられるように
カメラを手に取った。




初めは1本のフィルムだった
赤の世界のネガは

今はもう数え切れない。

部屋を埋め尽くす写真が
増えるほどに

俺の中の隙間まで
埋め尽くされる思いで




俺は

その写真を糧にして
ゆっくりと生きていた。


 
< 179 / 186 >

この作品をシェア

pagetop