赤の世界
転機が訪れたのは
本当に最近の事――。
退院の日に
あのマンションの屋上で
「手伝うよ」
と言ってくれた景と楓が
その道を作ってくれた。
俺の撮り溜めた写真を
景が懸命に整理し
景に選抜された写真を
出版社に就職した楓が
時間をかけて売り込んでくれて
“写真家”
それが俺の今の職業。
もちろん腕はまだまだで
本業は大学生だけど
3年間も延々と
写真を撮ってきたからか
楓の勤める出版社からは
それなりに腕を評価された。