赤の世界
 
そうして

楓の勤める出版社から
新人賞という賞を貰い

俺はついに初めての
個展を開くことになった。




「本当に景と楓には…」

「なんてお礼を言えばいいか」

「…ありがとう」



個展の会場で絞り出した声は
開場前のホールに響いた。



「お礼なんて…いらないよ」

「うん、好きでやってるんだ」



楓と景はゆるやかに笑って
小さく頷いて見せた。



「悠のことも…」

「悠の写真のことも」

「好きなんだ」



「悠の写真が…」

「とっても綺麗だったから」

「人に伝えたかったの」



目頭が熱くて目を擦ると
景が会場前に泣くなよと
肩を叩いてくる。



「そうだな…」


俺は力の入らない頬で笑い
もう一度ありがとうと言った。


 
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